発達障害の一種である学習障害(LD)
他の自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)といった発達障害にくらべて、比較的問題行動が少なく生活面で大きな困りごとがないため、障害に気づかれにくいという一面を持っています。
そのため、学習障害を持った子どもは、これまで「勉強が苦手な子」「勉強ができない子」と評価され障害が見過ごされてきました。
しかし、その後さまざまな研究が進み、生まれつきの脳の機能障害が原因で引き起こされていることが分かっています。
決して「子どもの努力不足」でも「親のせい」でもない学習障害。
親はどのように子どもに接していけばいいのでしょうか?
ここでは、学習障害のことを詳しく解説していきます。
目次
学習障害(LD)とは
学習障害とは、略称「LD(=Learning Disabilities)」。
知能全般に問題がなく、本人の学習意欲も十分にあるにもかかわらず、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」という6つの能力のうち1個以上に困難が生じている状態のことをいいます。
症状のあらわれ方は人それぞれですが、
・教科のなかでも国語や算数の成績が極端に悪い、
・「1〜2学年相当」の勉強の遅れが見られる
などといった特徴があげられます。
知的障害と発達障害の違いは?
知的障害と発達障害は、別グループの障害ととらえるといいでしょう。
知的障害かどうか判断する主な基準は、下記の3つです。
【知的障害の3つの基準】
・IQ(知的指数)が70以下
・発達期(18歳まで)に障害があらわれる
・障害により日常生活での困りごことが起きている
下の図のように発達障害のうち自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)の2つの障害においては、発達障害の特性を持ちながら知的障害を併せ持つケースもあります。
また、学習障害は知的障害ではありません。
というのも、学習障害と診断された子供には「知能全般には大きな遅れがない」という特徴があります。
実際、学習障害の子どものIQ(知的指数)を調べると、年齢相応もしくはそれ以上といわれています。
全般的な知的発達が数学年遅れている知的障害に対して、IQは正常であるにも関わらず、学習面において特定の分野ができないといった特性を持つのが学習障害なのです。
原因は?親から遺伝するの?
学習障害の原因は、生まれつきの脳の機能障害であることがわかっています。
しかし、なぜ脳に機能障害が起きているかについてはまだ研究段階。原因やメカニズムは、はっきりと解明されていません。
親からの遺伝の可能性も考えられますが、現段階ではそれを裏付けるデータや科学的証拠はありません。
発達障害を持っていると考えにくい親から、発達障害の子どもが生まれてくることもありますし、発達障害の親から必ずしも発達障害の子どもが生まれてくるとは限りません。
意外と多い学習障害の有名人
学習障害を抱えながらも活躍している有名人はたくさんいます。
例えば、世界的な名監督スティーブン・スピルバーグや、ハリウッドスターのトムクルーズ、キヌアリーブスは、失読症を公表しています。
また、歴史的人物でいうと、世界的に有名な物理学者アインシュタインは暗算が苦手だったといわれ、自閉スペクトラム症(ASD)を伴う学習障害だったのではないかといわれています。
診断テストはあるの?学習障害の診断について
学習障害の診断ができるのは、医師のみです。
診断の仕方は医療機関にもよりますが、一般的に問診(既往歴の確認、症状や困りごと聞き取りなど)、脳波・頭部CT・MRIなどの検査、知能検査などを受けたのち、学習障害の診断が行われます。
ご家庭では、問診時に子どもの症状を的確に伝えられるように、日頃から行動を観察し、特徴をメモにしておくといいでしょう。
学習障害(LD)の子どもの特徴・チェックリスト
学習障害の子どもには、主に次のような特徴があります。
・極端に苦手な教科がある(特に国語・算数)
・言葉を復唱できない
・順を追って話すのが苦手
・小さい「つ」や、「や・ゆ・よ」が入った言葉を上手く発音できない
・「れ」と「ね」、「め」「ぬ」など文字の形が似ていると区別がつかない
・文章を読むときに、過度に緊張しスムーズに読めない
・読み飛ばしが多い
・文字のバランスが悪く、罫線やマス目から大きくはみ出る。
・漢字やアルファベットが書けない
・「1 + 1」のような簡単な計算でも暗算ができず、毎回指を使わないと答えられない。
・算数の文章問題が理解できない
・繰り上がり、繰り下がりの計算ができない
子どもに学習障害を疑ったら・・?
まずは専門機関に相談し、診断を受ける
上のチェックリストに当てはまる項目が多い、またその症状がある一定期間(6ヶ月以上)続いた場合は、まず、地域の「発達障害者支援センター」や「保健センター」「子育て支援センター」などに相談しましょう。
医療機関によっては、医療機関に繋いでくれるところもあります。どこで診断を受ければいいか分からないという方は、気軽に問い合わせてみるといいでしょう。
また、かかりつけの小児科医がいる場合は直接相談してみるのも◎。
学校へ相談、サポートを依頼する
医師へ学習障害と診断されたあとは、学校へ報告と相談、サポート依頼を行います。
というのも、学習障害の子どもの困りごとが起こる多くは、学校の中だからです。
子どもの特性を学校に理解してもらえば、特定の教科のみ特別支援学級を利用することもできます。
子どもが学校で居づらさを感じる前に、学校と親が連携し子どもの特性に合わせた支援を行っていくことが大切です。
放課後等デイサービスで支援を受ける
学校での支援の方向性が定まってきたら、児童福祉法に基づいた「放課後等デイサービス」という小学生〜高校生の障害のある子どものサポートをする福祉サービスを利用するのもいいでしょう。
放課後等デイサービスでは、主に「日常生活の困りごとの軽減」「生活能力の向上」「将来に向けての自立支援」を目的に、発達障害の子どもとその親の支援を行っています。
専門的な知識を有したスタッフによる指導を受ければ、学校での困りごとも軽減していくでしょう。
利用方法など詳しくはこちらの記事で紹介しています。
過去の記事:岐阜・可児で放デイを検討している方は早めに「見学会」へのご予約を
【小中高生別】学習障害の子どもへの接し方&おすすめの勉強法
学習障害の子どもにどう接したらいいか悩む親御さんも多いことでしょう。
しかし、学習障害だからといって悲観することはありません。ついつい、出来ない部分に目がいきがちですが、親は子どもをよく観察し特性を理解し、できる部分を伸ばしてあげるように接することが大切です。
小学生低学年:親が根気よくサポート!
小学生低学年の頃は、学習障害の症状が明らかになってきます。
「周りの子どもと同じようにできない」
「何度練習しても、できるようにならない。」
こういったことが続くと、親も焦りが出てきて叱ってしまうこともあるでしょう。
しかし、まず叱るよりも一緒に考えることが大切です。
この頃は、苦手なことをフォローする意味でも、親が宿題をみるなど根気よくサポートをしてあげましょう。
小学生中学年〜・中学生:塾などの第3者の力を借りよう!
小学校中学年以降は、塾に通うなど第3者に任せるのもいいでしょう。
というのも、親がつきっきりで学習を見ていると「親が勉強をやらせる」というスタイルになってしまい、自発的な勉強を妨げる要因となってしまうからです。
また、やらせる親とやらされる子どもという関係性では、親子間の衝突も増えてしまうでしょう。
学年が上がるごとに勉強の難易度もどんどん上がっていきます。個別指導の塾や、家庭教師などを活用するのもおすすめです。
高校生:勉強の仕方を工夫し、苦手なことをカバー
高校生ともなると、主体的に学習を進める時期です。
親は子どもの困りごとを察知し助言するなど、サポート役に徹しましょう。
ポイントは、勉強する際にさまざまな工夫を取り入れること。
なぜなら、勉強の仕方を工夫すれば、学習障害によりあらわれる苦手なことをカバーすることができるからです。
例えば、有名人のミッツ・マングローブさんは読み書きしたことを覚えられないという学習障害をお持ちです。しかし絵や歌にして覚えるなどの工夫をして、難関の慶應義塾大学・法学部に合格しています。
子どもがどのように勉強したらいいか悩んでいる際は、親は一緒に解決策を考えてあげるといいでしょう。
大人になったらどうする?学習障害の子どもへ今からできること
子どもは成長と共に自分が他の子とは違うことに気づきます。
「私って変なの?」
「私ってなんで他の子と違うの?」
という疑問を抱き、不安になっている子どももいることでしょう。
そんなとき、親は決して子どもだからという理由で「気のせいじゃない」「大丈夫だよ」などと曖昧にこたえ、放置してはいけません。
不安な気持ちをしっかり受け止めたうえで、困りごとをどう改善させていくか一緒に考えてあげることが大切です。
というのも、学習障害を含めた発達障害は、現在、根本的な治療法は確立されていません。つまり、大人になってもずっと障害に寄り添いながら社会生活を送っていかなければいけないのです。
幼少期からの「直面した問題を解決する」という経験の積み重ねは、大人になってから大きな生きる力になります。
子どもには、障害ではなく「個性」と説明しいつも味方でいることを伝えましょう。
可児市の放課後等デイサービス「たんとある」は、学習障害を持つ子どもの将来の就労・自立を支援します。
「たんとある」は、学習塾・東進ゼミナールを母体に持つ放課後等デイサービスです。
現在、可児市に教室があり、学習障害(LD)・注意欠陥多動性障害(ADHD)・自閉症スペクトラム(ASD)などの、発達に特性のある子どもたちの自立・就労を支援しています。
無料の見学会も随時受付中です!ぜひお気軽にお問合せください。