自閉スペクトラム症(ASD)の子どもにはどのような特徴や症状があるのでしょうか?
ここでは、よく見られがちな行動をご紹介するとともに、医師による診断が行われる時期、基本の接し方などを詳しくご紹介していきます。
目次
発達障害のひとつ「自閉スペクトラム症(ASD)」とは?
自閉スペクトラム症(以下、ASD)とは、生まれつきの脳機能の障害により引き起こされる発達障害の一種で、かつて自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていた障害を総称したものです。
自閉度と知的障害の有無により「高機能自閉症」と「カナー症候群」などに分類され、
- 高機能自閉症のうち、知的障害を伴わないものを「自閉症」
- 高機能自閉症のうち、言語発達に遅れがなければ「アスペルガー症候群」
- 知的障害をともなう自閉症を「カナー症候群」
としています。
ASDの「3つの特徴」
ASDは「社会性の障害・コミュニケーションの障害・こだわり行動」といった3つの特性があり、人への関心が薄く同じ行動や動作を繰り返すといった特徴があります。
3つの特性を一つひとつ解説していきましょう。
1.社会性の障害
社会生活において、人と良好な関係を築くためには、相手の気持ちを察し、場の状況を理解しながらコミュニケーションをとっていかなければなりません。
ところがASDの人は、人への興味や愛着心が小さく、そもそも自分の言動に相手がどう思うかを想像することができないため、社会性のある行動が困難です。
そのため、社会の集団に入ると周りからは「マナーが悪い」「常識がない」「空気が読めない」「自己中」などと誤解されてしまい、しばしば非難されることも……。
しかし、これらの行動の原因は、決して親のしつけや本人の性格のせいではありません。
生まれつきの脳機能が原因となって引き起こされているので、本人にとっても全く悪気がなく、自然な行動といえます。
こうした特性を抱えたまま社会生活を送っていくためには、さまざまなトラブルに直面しやすいので、早い段階で療育に通うなど適切なサポートを受けることが大切です。
「社会性の障害」による行動まとめ
- 人に合わせて行動できない
- 深く付き合える友達ができない
- その場の空気を読めない
- 暗黙のルールが理解できない
- 社会的なマナーを守らない
- 相手との適切な距離が分からない
- 思い込みが激しい
2.コミュニケーションの障害
また、人との意思疎通や共感が難しいという一面も持っています。
ASDの人はあいまいな表現が苦手で、言葉も字義通りに受け取る傾向があるため、言葉裏にある意味を汲み取らなければいけない冗談や皮肉の理解が難しく、たとえ話も苦手です。
また共感性も低いため、相手の話を聞かずに一方的に話し続けたり、相手の気持ちを察して言葉をかけることもできないため、相互のコミュニケーションが困難という特徴も持ちます。
こういったコミュニケーションの障害は、幼少期には「言葉の遅れ」といった症状に現れますが、これは人とコミュニケーションを取ること自体に関心が薄いという特性が原因と考えられています。そもそも人への関心があまりないので、言葉を話したいという欲求が生まれにくいのです。
「コミュニケーションの障害」による行動まとめ
- おせじや冗談、皮肉が通じない
- たとえ話が苦手
- 人との会話が成立しにくい
- 相手のことを気にせず一方的に話す
- 自分の考えや感情を表現するのが苦手
3.こだわり行動
3つめの特徴として、同じ行動や動作を繰り返すこだわりの行動です。
ASDの人は変化を極端に嫌がり、順番や自らのルール、やり方を守ろうとする強いこだわりがあります。
こういったこだわりは周りから「わがまま」「融通がきかない」と思われてしまいがちですが、これらの行動は変化に対する強い恐怖心からくるものと考えられています。
そのため、上手く変化に対応できない場合はパニックを起こしてしまう可能性もあるので注意が必要です。
こだわり行動の現れ方は、人によってさまざまで
- 上半身を左右に揺らすといった動作の繰り返しを行うタイプ
- 毎朝同じ朝ご飯のメニューを食べる、同じ道で登校するなどルーティンにこだわるタイプ
- 興味のないことへは関心を示さず、好きなことへ没頭する興味の対象が限定的になるタイプ
などがあります。
注意欠陥多動性障害(ADHD)との違いは?
発達障害のなかでも最も多いといわれる注意欠陥多動性障害(ADHD)との違いが気になる方もいるかもしれませんが、ADHDとASDの症状は似ている部分が多く、併存することもよくあるため明確に分けることが難しいとされています。
出典:政府広報オンライン(https://www.gov-online.go.jp/featured/201104/)
また、症状の現れ方は年齢や環境によっても少しずつ変化していくものです。
図のように、発達障害のさまざまな症状が重なりあって出てくることを理解したうえで、あまり診断名にとらわれすぎずに、専門家にどのように障害に向き合っていくべきか相談するのがいいでしょう。
ASDは「幼児期」に診断が可能です。
ASDの診断時期は早く、だいたい3歳頃までに診断が可能です。
下記のような症状がみられ、多くの場合1歳半健診や、3歳児健診で指摘されることが多いといわれています。
ASDの幼少期にみられる症状
- 視線が合わない
- ほほえみ返さない
- 身振り手振りのマネをしない
- 言葉の遅れがある
- 集団に入れない
- こだわりが強い
- 感覚が過敏
発達障害かどうかは生後すぐにはわかりません。しかし、
「おむつが濡れていてもぐずったりすることが少なく、手のかからないおとなしい子だった。」
「あやしていても、反応が薄かった。」
「ハイハイができるようになっても、後追いをしなかった。」
など、診断の後に赤ちゃんのうちからそれらしいサインがあったと感じる保護者の方も少なくありません。
子どもがASDと診断されたら親はどうする?基本の接し方
ASDの根本的な治療法はまだ確立されていませんが、一番身近な親が接し方を工夫することで、子どもも日常を過ごしやすくなります。ここでは3つのポイントをご紹介していきます。
子どもの行動を全て理解しようとしない。程よい距離感で。
まずは、ASDの子どもを持つ親は子どもの言動や考え方を全て理解しようとせず、程よい距離感でいることが大切です。
ついついASDという診断名をつけられてしまうと、親がどうにかしてあげなければ……。という気持ちが早まり、子どものことをしっかり理解しようと頑張りすぎてしまいがちですが、いくら親といえども子どものことを全て理解するのは難しいものです。
特に、ASDの子どもは言葉の理解や使い方が独特であったり、状況の変化に混乱して思いがけない行動を起こしてしまうこともあり、子どもの感覚を想像することは容易ではありません。
子どものことをしっかり観察はしつつも、何とかしてあげようではなく、困っていることに、きちんと気づいてあげられる、程よい距離感で子どもに寄り添っていきましょう。
しっかり「ほめる」
そして、しっかり褒めてあげましょう。
ASDの子どもは、周りの子どもに比べて不得意なことが多い分注意されることも多いと推測されます。「〇〇はダメ!」「△△してはいけません!」などの否定的な表現ばかりを耳にしていると、自己肯定感が下がってしまうのはもちろん、ASDの子どもはその後自分が何をするべきなのが分からなく戸惑ってしまいます。
注意するときは、ダメなことを伝えたうえでどうすればいいのか具体的に伝えましょう。そして、それができたときには、しっかり褒めてあげましょう。
どんな小さなことでも成功体験を積み重ねることで、困難なことが少しずつ減り、同時に自信も備わっていきます。
あいまいな表現はせずに、分かりやすい言葉ではっきりと伝える
伝えるときの注意点としては、「直接的な表現」をすることを意識しましょう。
ASDの子どもは、例えやあいまいな表現が理解できません。
例えば、お母さんが忙しいときに「猫の手でも借りたいわ」というと、本当に猫を連れてこなければいけないと慌ててしまいますし、「その話は耳が痛い」といったら、心配して耳をのぞきこんだりします。
また、「ちょっとだけ」「あと少し」といった表現も理解するのが難しいため、
「ちょっと待っててね」ではなく「5分だけ待っててね」といった表現にするといいでしょう。
ASDの悩みや不安は岐阜や可児にある「支援センター」「療育」に相談を。
もしASDのことでお困りのことや不安なことがありましたら、岐阜で放課後等デイサービスを営む「たんとある」にご相談ください。
現場目線でさまざまなアドバイスをさせていただくとともに、実際に通われている生徒さんの話を通して「療育」についても理解が深まるかと思います。
可児市の放課後等デイサービス「たんとある」では無料体験・見学会も行っています。
「たんとある」は可児市に教室がございます。
無料で見学会や・体験会にもご参加いただくこともできますので、ぜひ近隣にお住まいの方は、お気軽にお問い合わせください。
たんとあるHP:https://tantoale.com/